もどかしい二人へ5のお題


この関係に名前を付けるとするならば  (??→フィーリア)
あと、10センチ  (エリオット×フィーリア)
じれったい奴等め  (??×フィーリア+エクレール)
別に、理由なんてない  (反転エクレール×フィーリア)
目が合わせられないのは (ヴァルター→フィーリア)









この関係に名前を付けるとするならば  (??→フィーリア)

彼女と自分の関係などわかっている。
主と、彼女に忠誠を誓うべき騎士だ。

自分をよく部屋に呼んでくれる。
自分と話すときには、他のものと喋っている時よりも笑顔が多い気がする。
人よりも贈り物を下賜してくれる。
そんなものに、特別な意味を見出そうとするのは…間違いなのだ。
ましてや主従以外の名前の関係を望むなど。
男は自室の内で額に手をやり己を嘲笑った。











あと、10センチ  (エリオット×フィーリア)

「あと、10センチも背が伸びれば、執政官殿よりも
僕の方が背が高くなりますね。」
出会った頃よりも随分と天井に近くなった頭に、エリオットは手を乗せた。
近頃少年を見上げねばならなくなったフィーリアは、その言葉にあら、と口元を押さえる。
「そういえば、そうね…。随分と背が伸びたのね、エリオット。羨ましいわ。」
「ありがとうございます、フィーリア様。でも僕まだまだ大きくなりたいんですよ。」
「私としては、これ以上大きくなられると首が痛いのだけど…。
でも成長期ですものね、まだまだ伸びると思うわ。」
「そうですね、できたら早く大きくなれるといいんですが。」
自分の言葉に、最近ますます美しくなった主は困ったように微笑んだ。
「そんなに早く大きくなって、どこにいくの。」
(どこにって、あなたの隣に行きたいんです)
昔、彼女がまだ姫だった頃。
目の前の人の役に立てるよう自分の家の血筋を探る旅に出たことがある。
結局それは、この人の役には立たなかったのだけど、
その時何彼となく世話を焼いてくれた執政官がまだ少年だったエリオットにとって、
大人の、頼れる人間の象徴となった
だから決めたのだ。
今はまだ、幼く未熟で頼りなく、彼女に迷惑をかけてばかりいる自分が
ヴィンフリートの背丈を越えるぐらい大人になったなら、
頼れる人間になったなら、隣に立ちたいのだと目の前の愛する人に告げようと。

背丈が超える日は、もうじきくるはず。
その日が早く来ることを、エリオットは強く願う。











じれったい奴等め  (??×フィーリア+エクレール)

「この国の殿方って、いつもは自信満々の癖して
いざとなると不甲斐無いですよね、姫様。」
「仕方ないのではないの?エクレール。」
「だって姫様、ずぇったいにそうなのだとわかり切っていて
手を出さないのですもの。臆病者と謗られても致し方ありませんわ。」
「まぁまぁエクレール。仕方ないわよ、誰だって命は惜しいもの。」
「…それもそうですわねー。」
あははは、うふふふふ
誰がどう見たところで両想いカップルである相手とデートして
手も繋がなかった軟弱者に向けての会話である。
極端な例を挙げれば、無礼を働いたとして打ち首になりかねない相手だ。
アクションを起こすのが難しいのはわかっている。
わかっちゃいるが、それでもそのアクションが向こうから欲しいのが乙女なのだ。
あぁじれったい奴等め。











別に、理由なんてない  (反転エクレール×フィーリア)

臣籍降下する。
そう告げると目の前の従妹は、零れ落ちんばかりに目を見開いた。
「どうして?エクレール。」
「全ての人が姫様の敵に回っても、姫様の味方をするために。
必要ない義務を押し付けてくる身分などいりません。」
答えに満足いかなかったのか、フィーリアは顔をゆがめ、そして俯く。
伏せられた睫の長さや、美しく優しい色をした金の髪を暢気に眺めていると
ぽつり、部屋に声が落ちた。
「どうしてなの、私、そんなにしてもらえるような事、あなたにしてないわ。」
「どうしてっていわれても…」
そんなこと言われたって困る。
ただ自分は姫以外に大事なものなどないだけだ。
理由なんて別にない。











目が合わせられないのは

いつもの酒場の片隅で、ヴァルターは一人唸っていた。
普段は周りを囲っている兵士や騎士たちも、入ってきてから
ずっと唸りっぱなしのヴァルターを気味悪がって近寄ろうとしない。
だが、そんなことにも気がつかず、ヴァルターは唸り続ける。
近頃自らの主と目が合わせられない。
主たるフィーリアと、その侍女エクレールは、そんな自分の態度を
「自分達を淑女と意識したが故のもの」と解釈して寛大に
受け止めているようだがそれは違う。
騎士の仕事には貴婦人に奉仕して、気持ちよく迎え入れられる同席者であることも含まれる。
青い若輩ものならともかくとして、ヴァルターほどのものになると
幾ら苦手意識があろうとも、あからさまに不審に思われるようなことはしない。
彼がそれを実践できていないのは


(俺が姫様を好きだとか、さすがにそれは、不味いだろう。)


いつの間にか自分の心に、深く根を張ってしまった想いがあって
それが無邪気に、純粋な意味で、自分を慕ってきてくれているだろう姫を
裏切っているようで、目がまともに合わせられない。
身分の差だとか、歳の差だとか、自分に不幸しかもたらさぬままに終わった、不様な結婚の事だとか
様々な障害の事が頭をよぎって、ヴァルターは大きなため息をついた。











あとがきもどきもどき


・この関係に名前を付けるとするならば
こういう葛藤ってあんまりなかったですよね。
補足しろって事でしょうか。

・あと、10センチ
だいたい、2・3年後辺りでしょうか。

・じれったい奴等め
じれったいってカプが思いつきませんでしたので。

・別に、理由なんてない
いえね、反転だったらエクレールはさぞかし萌えキャラとなっていたのだろうとー。
思いついて。思いついて、その、思い、ついてしまって。
すみませんねぇ、初っ端からゲテモノに走って。
でもこれ正直反転である意味って、げふげふ

・目が合わせられないのは
ヴァルターさんは一体幾つなんだろうかという疑問。
設定資料集とか欲しいなぁ。


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