騎士とは皆が言っているように、高潔な生き物か?
…いや、騎士王の時代ならばともかくとして
血筋に甘え、ただ主の言うままに唯々諾々と従う今の騎士は
犬と言った方が、相応しい生き物だ。
「と、僕は思うんだけどね。」
一体何処からそんな会話になったのか。
そんなものはどちらももはや覚えていないだろうが、
いつものように、召喚したレミーと会話するうちに『騎士とは?』という話の流れになった。
そしてそのまま流れで「レミーは騎士をどう思ってるの?」と聞いたフィーリアに対しての
レミーの回答が、上記のあれである。
なんというか、惨い。
いきなり犬呼ばわり。
確かに、時代を経て、世が安定してゆくに従い
名誉を賭け、主の為に命を散らすようなことも少なくなった。
そのせいで、訓練を怠り己の血筋のみに甘え、騎士としての腕も精神も磨こうともせず
だらだらと仕える主に首輪をつけられ飼われる騎士も多い。
だが、それでいきなり犬呼ばわり。
しかも自分だって、仮にも騎士なのに。
ぐらぐらと揺れる頭を押さえて、フィーリアはレミーを横目で見て、口を開く。
「…自分の就いている職を犬呼ばわりするのはどうかと思うのよ、レミー。」
苦々しい顔で見られて、レミーは口の端をあげた。
「別にいいじゃないか。大体鍛錬場の寂れ具合がいい証拠だろう。
フィーリア様が特訓を命じなければ、だーれも使ってないんだから。
フィーリア様の意のままに、あちこちに飛ぶ僕達以外に
城に常駐する騎士が腐るほどいるにもかかわらず、ね。」
「……レミー……。」
ごく自然に毒を吐く己の配下に、フィーリアはぐったりと肩を落とし、呆れた顔をした。
「大体あなたが犬って柄かしら。裏切りと策略を得意とするあなたが。」
「犬って言うのは、上下関係に厳しい生物だからね。
自分より下のものには厳しいのさ。」
そこまで言った後、レミーは、はた、と気がついたような顔でフィーリアを見た。
どうにも居心地の悪い視線に、フィーリアが身じろいだ瞬間
「あぁ、でもフィーリア様の犬にならなってあげるよ。」
あっさりと言ったレミーの表情からは、どういう意図の発言であるのか
窺い知る事は出来ない。
(……私、今すぐに心が読めるようにならないかしら。)
あまりの分からなさに、思わず馬鹿なことを思って
それで更に疲れる。
フィーリアは眉間をぐりぐりと押して皺を伸ばすと、
深々と大きなため息をついた。
私はレミーに夢を見すぎているような気がします。