「フィーリアってさ、舐めたら溶けちゃうんじゃないかなぁ。
こー…ざらって舐めたら。」
「そんなわけないだろう!」
アストラッドによって唐突に始まった唐突な話を、エクレールとフィーリアはさらりと受け流し
ヴィンフリートは律儀に突っ込んだ。
幼い頃から彼を良く知る二人は、アストラッドの唐突に始まった話には脈絡が無く
ただ、思いつきのままに垂れ流されるということをよく知っているが、
ヴィンフリートは未だそれに慣れない様子で、律儀に突っ込んではその脈絡の無さに腹を立てている。
「だって、フィーリアって砂糖菓子みたいにふわふわしてるし。」
「だからといって人間が溶けてしまうわけがない。
アストラッド、お前はもう少し物事という物を考えて」
へにょへにょがみがみ。
まだ己の主張を話すアストラッドに、理屈と正論を持ってヴィンフリートは長い長い説教を始めた。
それを一歩引いたところから眺めて、フィーリアが呟く。
「あの二人、あれで割りに仲いいわよね。」
「そーですわねー。」
その内容に、エクレールもうんうんと頷いた。
実際、一応あれで彼らはフィーリアを巡った恋敵である筈なのだが、
なんだかんだと言いながら、ヴィンフリートも助言はするし、アストラッドも相談を持ちかけにいく。
くだらない内容に、お説教もかましてあげる。
「なんていうか、兄気分なんじゃないですか?」
「あー。」
彼の弟は、陽気で社交的であるらしい。
どこかの誰かほど、お馬鹿さんではあるまいが。
「それでなんだかんだ言いながら、無下に扱えないのかしら。」
「まぁ推測に過ぎませんけどね。」
のほほーんと会話しながら、フィーリアは干菓子をつまんで口の中に放り込んだ。
目の前ではいつの間にやらアストラッドが正座させられ、今まで起してきた
数々の騒動について謝罪させられている。
花壇を通って何処かへ行くな。
すみません。
厨房でつまみ食いをしない。
すみません。
無理矢理突っ切って洗濯物を飛ばすな。
ごめんなさい。
「兄って言うか、母親。」
「え?」
首をかしげたエクレールに、なんでもないと首を振ってフィーリアは干菓子をごくりと嚥下した。
首を後ろに倒して、窓から空を仰ぎ見る。
空は異様なまでに青かった。
あー今日は平和だ。















アスト・ヴィンフリート×フィーリア+エクレール?
日常話